部門
特色ある3つの部門
- 男子部門
- 女子部門
- 音楽部門
1941年、山水中学校の開校以来、男子部門は武蔵野という言葉の響きも懐かしい国立の地に教育の根をおろし、活力に溢れた教育を展開してまいりました。そして2016年、桐朋学園創立75周年の記念事業として進められた小・中・高の校舎建替え事業も無事に竣工し、次の時代に向けた清新なる教育の形が整いました。
1947年、東京文理科大学・東京高等師範の協力・指導のもとで、桐朋学園としての新たなスタートが切られたその4月、桐朋中学校としての初めての入学式で語られたのは、「桐朋生としての再出発にあたり、自主的精神を以て勉学に努めよ」という言葉でした。一人ひとりが学問的な知性に裏打ちされた自主的な判断力をもって新しい社会の建設に主体的に関わること、これはまさに、戦後という新たな時代を創る人間の理想像だったのです。以来、「本質的・体系的な学問の探求」「生徒・教職員の一人ひとりの人間性の尊重」そして「自主的精神の養成」といった男子部門の教育の基本精神は、今日まで変わることなく貫かれております。
桐朋中学校・高等学校は、自由闊達にして自主性を尊重する校風のもとで、一人ひとりの生徒を、豊かな心と確かな知性を持つ創造的人間として育成することに力を注いで来ました。また、1959年に誕生した桐朋学園小学校は、子どもたちの心身の伸びやかな成長を促す「一人ひとりの子どもの、心のすみずみにまで行きわたる」教育を追求しています。この3つの学校をつなぐように、キャンパスの中央には武蔵野の面影をとどめる雑木林が変わらぬ緑を湛え、多くの昆虫や野鳥たちがそこに集います。この類まれなる教育環境は、児童生徒が多感な青少年期を過ごすには実に理想的なものだと思います。
これまでに、2万2千名に迫る卒業生が、男子部門のキャンパスを巣立って行きました。年齢も立場も違うそれぞれが社会の様々な場面で出会う時、それが初対面であったとしてもお互い「桐朋OB」であることはすぐにわかると、多くの卒業生は言います。豊かな個性と柔軟な思考、そして常に本物を目指す心を共有するからこそ、彼らのスクラムの強さが生まれるのです。男子部門は、21世紀を引き受けて逞しく社会の中心を歩む青年たちを育てるために、今後も日々の教育活動に取り組んでまいります。
保護者に手をひかれて幼稚園児が退園する際、通り道に面した空間で短大の演劇専攻の学生が演技の練習に余念がない。
小学校のプレイルームでは時に短大の音楽専攻の学生の出張演奏会が行われ、小学生になまの楽の音を披露しています。
グラウンドでは中学生が保健の授業の一環で小学生を相手に遊びをリードする姿が見られます。
大きな行事には、中学と高校の生徒会が合同で企画・準備・運営その他に取り組み、時には3,000人を超える来校者に感動と満足を与えています。
幼稚園・小学校・中学校・高等学校・短期大学の5つの学校(園)で構成する女子部門が、各学校(園)の園児・児童・生徒・学生一人ひとりの個性・発達階段に応じた自由で独特な教育を展開する中にも、学校同士、子ども同士が緊密に接触する場面を共有する機会を持ち、互いにそれを各学校の教育活動に生かしている様子がわかります。
こうした教育の成果は、卒業生の懐旧の念の強さに加えて、自分の子どもが卒業しても学園と繋がっていたいと望む保護者が、桐朋教育研究所の運営する桐朋講座にほぼ無期限に参加している人数の多さにも表れています。
自分の居場所を学校の中にも見出すことが、学校生活全体を通して可能となるように、教員一人ひとりがその持てる能力と性格を充分に生かし、熱意を以て日々取り組んでいます。
戦後の日本は、焦土と化した荒廃のなかから、高邁な人間の理想と希望、そして健全なる社会をめざして新たな歩みを始めました。
音楽部門の教育もまた、そのような戦後社会の息吹と無関係ではありません。
1948年、東京市ヶ谷に「子供のための音楽教室」が開設されました。今日の音楽部門の音楽教育の原点です。
この「子供のための音楽教室」において、斎藤秀雄、井口基成両先生をはじめ音楽部門の創始者たちは、子供たちの限りない才能を大切にし、これを育むことこそ音楽教育の礎である、との固い信念をもって日々の教育に取り組まれました。混沌とした戦後のなかで、日本の将来にたいする希望を、無垢な子供たちの無限の可能性に託したのです。
現在、音楽部門は、調布市仙川・調布市調布ヶ丘に、四年制大学である「桐朋学園大学」、調布市仙川に「桐朋女子高等学校音楽科(共学)」、そして、富山市呉羽の地に「桐朋オーケストラ・アカデミー」と、芸術系としては我が国初の独立の大学院である「桐朋学園大学院大学」を擁しています。桐朋学園大学では、多様な教育の場として各種のディプロマ・コースも開設しています。なお、2017年4月には、桐朋学園大学音楽学部を基礎とする大学院音楽研究科(修士課程・博士後期課程)が開設されました。
戦後日本の音楽教育をリードし、今また世界をリードする音楽部門。現在、調布市と富山市の2つのキャンパスにおいて、創立以来の教育理念を大切に守りながらも、これのみに拘泥するのではなく、進んで世界や時代のニーズを積極的に取り入れ、創造性豊かな音楽家の育成に取り組んでいます。